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レンズコーティングとは

ここ数年、ニコン・ナノクリスタルコート、キヤノン・SWC、ソニー・ナノARコーティングなど、新しいレンズコーティングが出てきて、いろいろ話題に上がってますが、レンズコーティングってなんだーって方も多いのではないでしょうか?、ここでは軽くコーティングのことをまとめてみました。

レンズコーティングの役割

一言で言うと、レンズ面での光の反射を減らして、レンズの透過率を上げるのが最大の役割になります。全くコーティングをしてないただのガラスの場合、レンズ面でおおよそ4%反射すると言われています。通常レンズは複数のレンズの組み合わせで作られるためレンズとレンズの間で反射を繰り返すので、数枚程度ならともかく10枚とか枚数が増えると反射を繰り返した光によって白く濁ってきてしまいます。対して、最近の一般的なコーティングでは反射率を0.1%まで低減することができ、さらにナノクリスタルコートなどに代表される最新のコーティングでは0.05%ぐらいまで低減できると言われています。

下にイメージ図を貼っておきます。

イメージ図では省略しましたが、実際には光がレンズから空気に出るときも反射があります。

コーティングがない、もしくはコーティングが十分ではなかった時代では、レンズの枚数を増やすと反射の影響で画質の低下が大きかったため、構成するレンズはできるだけ少なくする必要がありました。そのため、構成するレンズの枚数が多いレンズは実用的なものがつくれなかったという時代もあったようですが、コーティング技術が上がったため複雑なレンズ構成もできるようになり、高倍率ズームレンズなどが登場しました。

つまり、コーティング技術が上がれば構成レンズの枚数を増やせてレンズ設計の自由度もあがるので、今までは出来なかったレンズがでたり、レンズ設計そのものは変わらなくとも、コーティングが変わることで反射による画質低下が少なくなり、今までだと白っぽく写ったシーンでもクリアに写るレンズになったりします。そのため各社レンズコーティングの開発に力を入れているのです。

そんな中で、ここ数年出てきた新しいコーティング技術は非常に効果が高く大きく話題になっている状態です。

カメラのイベントでコーティングなしと従来のコーティングとナノクリスタルコートの比較サンプルの写真を撮ったので、こちらに貼っておきます。

一番左は、14枚の光学ガラスをそのままのもので、内部の反射で完全に真っ白に濁ってしまって、ほとんど下まで見ることが出来ない状態でした。

中央は、現行のニコンのすべてのレンズで使われてるニコンスーパーインテグレーテッドコーティングと言われるコーティングで、こちらは従来の方式のコーティングです、ナノクリスタルコートと比べてしまうと大したことがないように見えますが、このニコンスーパーインテグレーテッドコーティングも当初は話題になった、コーティングです

右は、ナノクリスタルコートという最新のコーティングで、さすがに若干反射はありますが、かなりクリアで底のNikonのロゴがしっかり見えます。しかも従来コーティングと違い、色が付いてないのが個人的にはすごいと思って見てました。

アルネオコートはナノクリスタルコートの後継ではない

このページを作って数年たち、ニコンから新しいコーティングとして「アルネオコート」とよばれる新しいコーティングが発表されました。

そのためか、結構多く聞くのが「ナノクリスタルコートを進化させた後継」と言われたり

これはニコンの紹介の問題でもあるのですが、(といってもそうとしか書きようがない)、「レンズ面に垂直に入射する光に対して、ナノクリスタルコートと同等以上の反射防止効果があります。(中略)斜めからの入射光を低減するナノクリスタルコートと組み合わせることで、入射光が原因で発生するゴースト、フレアの低減に大きな効果を発揮。」と書かれてあるため

斜光に強いナノクリスタルコートに、ナノクリスタルコートの弱点だった垂直光に強いアルネオコートという話も聞いたりしますが、ナノクリスタルコートは垂直光に弱いわけではないのです。

で、後継ではないと書いた理由ですが、アルネオコートとナノクリスタルコートは、そもそもの出発点が全く異なるのです。

難しい話になってしまうので先に結論を書くと

反射をさせないナノクリスタルコート

反射を打ち消すアルネオコート

ということになります。うち消す方のコーティングでは、ニコンスーパーインテグレーテッドコーティングがうち消すタイプなので、「後継」というのであれば、ニコンスーパーインテグレーテッドコーティングの後継がアルネオコートといえます。

ナノクリスタルコートの仕組み

ちょっと文だけでは難しいので、図で

反射の特徴として、、空気から水に光が入るときに水面で反射するなど、屈折率が大きく変わるときに反射しやすいため、屈折率の変化を穏やかにしてあげれば、そもそも「反射が起きない」と考えて作られたのが、ナノクリスタルコートやキヤノンのSWCやソニーのナノARコーティングやペンタックスのエアブライトコーティングといった、ナノコートと呼ばれる技術

「反射をさせない」技術です

反射をさせないため、垂直光でも斜めから入った光でも、非常に高い反射抑制ができ、また光の波長の長さ(色)にも左右されないという優れた特性があります

なので、ナノクリスタルコートは、斜光に強いのではなく、垂直光にも斜光にもあらゆる色にも強いというのが、より正確なのだと思います。反射抑制という面だけで考えれば、ナノコーティングは理想的な性能を持っています。ですが、大きな弱点もあります

極めて繊細な構造なので、物理的に弱いという弱点もあり、製造時にも慎重に扱わなければ、能力失うため、多くのレンズに施すのは現実的ではなく、最も効果があり、かつ手で触れることのない内部の1枚に施すのが普通です。

(こすったりすれば、ナノレベルのガラスの突起など簡単に折れそうなのは想像に難しくないと思いますし、空気も重要なので空気の場所に油分が入ってしまったら、効果を失う)

アルネオコートの仕組み

アルネオコートは、ニコンスーパーインテグレーテッドコーティングなど、昔からあるコーティング技術の最新版といえます。図では、ごくごく初期のコーティングを単純化したものです

光は、波としての性質があるため、うまく逆位相の波をあてると打ち消しあいます。これは、ノイズキャンセリングのイヤフォン(音の逆位相)などと同じ考え方です。

どうやって逆位相の波を当てるかというと、コーティング表面で反射した光とレンズ面で反射した光が逆位相の波になるように、コーティングの厚さを調整することでうち消しています。

緑の550nmの波長に合わせたコーティングの厚さ、1層だけだと、550nm以外の波長、黄色や赤や青・・などには対応できません。極端な話、特定の色でかつ垂直に光が入った時のみ反射を消せるというものになります。
さすがにそれでは、効果が弱すぎるので、いろいろな波長(色)に対応できるように、何層ものコーティングを施しています。

コーティングの厚さが重要になるため、「斜めから光が入ると」コーティングの中を通る距離が変わるため、設計通りにうち消すことができなくなります。(より長い波長の光・赤色側に効果がシフトしていく)

なので、「うち消すタイプ」のコーティングは、垂直光に強いのではなく、垂直光で設計通りの効果を発揮し、斜光には弱いという方がより正確なのだと思います。

一方で、ナノコーティングと違い、物理的に強いため、どの面のレンズにも施すことができるのが大きな長所といえます

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