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レンズの製品ページなどにいくと、多くの場合MTF曲線というグラフがついています。あのMTF曲線とは何かというと、そのレンズのコントラストと解像度をグラフに表したもので、簡単に言ってしまえば、レンズの性能の一部をグラフ化したものといえます。
MTF曲線だけでは、レンズの善し悪しはわからないのですが、知っておくとある程度レンズ選びの役に立ちます。
とりあえず、Nikonの高倍率ズームレンズのMTF曲線を借りてきました。
それぞれ何を指してるかですが
横軸:5、10、15、20と書かれてある部分ですが、これはセンサーの中心からの距離をmm単位で表しています。このレンズはフルサイズ用なので、36×24mm、対角線は約43.27mmで中心からの距離なので半分に割ると約21.6mmとなり、大体このグラフの横軸と同じだと言うことがわかります。
APS-C専用レンズなど、フルサイズより小型のセンサー専用のレンズの場合、横軸の数値が小さくなっています。
またAPS-Cサイズのデジタル一眼レフにフルサイズのレンズをつけることを想定して、購入を考える場合は、APS-Cサイズの対角線の長さは約28.4mm、中心からの長さは14.2mmなので15mmより後ろは写らないので完全に無視して構わないと言えます。
縦軸は、コントラストを最大1.0として表したもので、赤線(10本/mm)のコントラストが1.0に近いほど、高コントラストな描写(ぬけが良いレンズと言われる)であることを示し、青線(30本/mm)のコントラストが1.0に近いほど、高解像度でシャープなレンズということを表しています。つまり、コントラストと解像度については、1に近ければ近いほど高い描写力だということになります。
赤線と青線両方とも、実線で描かれたグラフと、点線で描かれたグラフが書かれてありますが、それらにも意味があります。実線の方は、中心から放射方向(中心から、センサーの角への直線方向)のコントラストの変化で、点線の方は、中心から同心円状のコントラストの変化をグラフにしてあります。
緑の線が実線部分で赤い線が点線の部分です、ここは、あくまで推測なのですが、同心円状の場合放射方向と違い、つながった線ではなく別々の線の集まりなので点線で表記されているのだと、想像してます
なぜ、放射方向と同心円方向のコントラスト変化が書かれてあるのかというと、写真は、小さな光の点(焦点)の塊で描かれてるわけですが、その焦点の形がセンサーのどこでも完全な円形ならば、放射方向と同心円方向のコントラストは同じになるはずですが、非点収差やコマ収差の影響などで、焦点の形が楕円形などにやや変形するため放射方向と同心円方向では異なる傾向を示すため両方書かれてあります。
実線と点線が同じ傾向を示してるグラフほど、綺麗なボケになる傾向が強いと言われています。(放射方向と同心円方向のコントラストのムラが少ないので、素直な描写にもなると思います。この点は、調べても出てこなかったので、私の憶測ですが・・)
メーカーで公開してるMTF曲線は大抵開放時の曲線のみ公開してることが多いです。大抵のレンズは、絞りを絞ると収差の影響が小さくなるため、MTF曲線は良い方向へと変化します。(メーカーによっては、開放だけでなくF8まで絞ったデーターも載せてるメーカーもあります)
それらを踏まえて、実際にAF-S Nikkor 28-300 f/3.5-5.6G ED VR のMTF曲線を読んでみると・・
ワイド側(左側)のグラフを見ると、コントラスト(赤線)解像度(青線)がともに15mm付近から、急激に低下してコントラストも解像度も周辺はかなり低いので、周辺の描写は甘くなってそうです、ただAPS-Cサイズ(DXフォーマット)のカメラにつけた場合は15mm以降は描写されないので急激な落ち込みはなく、全体的によく写りそうです。
30本/mmの同心円方向(青点線)と放射方向(青実線)をみると、非点収差かコマ収差の影響が大きいレンズで、もしかしたら広角側のボケ味はあまりよくないかもしれないです。高倍率ズームなので、このあたりは仕方ない部分ですね
望遠側の方は、解像度はワイド側よりやや低くなる物の周辺まで大体均一な解像度がありそうです。と、大体このくらいは、読み取れます。
*一応、AF-S Nikkor 28-300 f/3.5-5.6G ED VR は高倍率ズームの中では比較的評判のいいレンズです
撮影目的に合ったレンズが複数見つかって、どれを選ぼうか迷ったときなどに、ちょっとだけ、MTF曲線を見てみるのもレンズ選びの参考にはなると思います。ただ、MTF曲線がレンズ性能のすべてではないので、あくまで参考程度に
それに、MTF曲線が優秀でも、自分の撮影目的にあったレンズじゃなきゃ意味がありませんから、ここまで書いておいて、なんですが・・あまりMTF曲線にとらわれないのも大事だとおもいます。
最後に、AF-S Nikkor 70-200 f/2.8G ED VRII のMTF曲線は、かなり綺麗だったので載せておきます
全体的に高い位置にグラフが来ていて、実線と点線の傾向も大体似ているので優秀なレンズだというのが、わかります。
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